平成19年度高齢市民が活躍するための社会技術研究会講演会
当NPO法人理事長 滝沢茂男
(文部科学省指定研究機関バイオフィリア研究所所長)


人口ピラミッドが逆転する少子高齢社会で、人々が自立した日常生活を送るためのトータルな生活設計が可能な社会技術(リハビリ器具や訓練システムを含む産業・政策・哲学など)を研究開発しています。
経済の発展や生活の利便の向上は技術革新・進歩によるものが大きいと思われます。 医学や工学の進歩は目覚しく、遺伝子分野での進歩は、難病治療を可能にする進歩をもたらしています。


反面脳血管障害や機能不全で障害者となった高齢者は、リハビリを受けながらも改善せず、寝たきりとなり、重度の要介護者となって苦しんでいます。 我々は、このプロジェクトでリハビリ分野への技術革新を実現できるよう研究を続けてきました。
皆さんの持つ不安を少しでも解消できるように、2007年、「自立社会構築のための機器普及プロジェクト」は神奈川県社会福祉協議会を通じた平成18年度独立行政法人福祉医療機構高齢者・障害者福祉基金助成事業としてこれまでの研究の成果を基にした講演会を開催しました。 会は大変好評をいただき、全国から報告書を求められています。


「NPO法人高齢市民が活躍するための社会技術研究会」はその結果として生まれました。
昨年の活動はこれまでの研究に参加された数多くの研究者の努力の賜物であると共に、それだけの価値のある内容と認めていただいたものと喜んでいます。 研究の社会化に向け一人でも多くの皆様のご参加を得て、充実した内容にできるよう期待しています。 筆者がすでに研究に携わっていた1990 年代に社会保障関連経費の旧厚生省による2025年予測は385兆円でした。

今の予測は141 兆円です。そこでは高齢者が若い世代に比べ1 人当たり約5 倍の医療費を使います。 3 大死亡原因(癌・心疾患・脳血管障害:脳卒中)について、今後改善が期待できます。 また脳卒中については医療技術の向上により死亡が減り、後遺症を残す事になります。

年金や保険料に影響を与える高齢者の余命について考えると、平成16年厚生労働省による簡易生命表では女性が85.59 歳、男性が78.64 歳で男女共世界一でした。 さらにアメリカに於ける日本人の平均余命の予測は83%以上の確立で90 歳以上まで生きるようになるとしています。 65 歳から平均寿命(80歳)で死ぬまで老国民が使うお金は冒頭に厚労省の予測141 兆円を示しましたが、単純な比で考えても90歳まで生きると235 兆円かかります。

誰がどのように負担するのでしょうか。 筆者はそれまでの障害を受容するリハ医学と異なり、障害の克服が可能なリハ手法があることを1987年に知りました。
そして、町のおじさん(筆者)の「リハ医学が間違っている。」という言葉は決して受け入れられないが、元市会議員が機会を得て「私は脳卒中で倒れた人が母のするリハで元気に暮らしているのをみている。
皆も身体機能を取り戻して、自立社会を作ろう」と訴えるのは受け入れられる。 知行合一を旨とする陽明学徒の筆者はそう考えました。
そして結果を省みず実行しました。


その問題提起を10 年以上前にし、認めていただいた木島名誉会長らと研究を進めてきた結果、今日、50年間リハ医学を進めてきた著名な福井圀彦医師と国立リハセンター病院の木村哲彦元院長は、他動運動によるリハ医学改革の必要性を筆者と共に訴えています。 そして「創動運動による健側主導のリハの推進」という解決策を提案できるようになりました。
介護によるのではなく、多くの高齢者や高齢障害者は廃用や障害を克服して自立生活できます。

障害があっても多くの人が自立生活する時代に適合した社会技術(哲学・医学・工学・社会科学・法整備・行政)を模索し確立する。皆さんの研究と実践への参加を期待しています。
本講演会は藤沢市・藤沢市社会福祉協議会・社団法人藤沢市医師会・NPO法人バイオフィリアリハビリテーション学会のご後援を得て、関係する方々からご協力いただき開催の運びになりました。
関係した多くの皆様に感謝申し上げます。

注(陽明学:儒教の一派、西洋哲学と比較可能であるとされ思弁性があり儒学の一つとされる。有名な陽明学徒に大塩平八郎、吉田松陰、高杉晋作、河井継之助などがいる。)